【解説】成人アトピーの治療と薬の種類まとめ

 

成人アトピーの治療は、外用薬を基本に、症状に応じて内服薬や注射薬を組み合わせ、長期的にコントロールしていく治療です。

「どの薬を使えばいいのか」「いつ内服や注射に進むのか」など、治療の全体像が分からず不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

私自身も成人してからアトピーが重症化し、治療薬を段階的に使用しながら、試行錯誤を重ねてきました。

この記事では、
・成人アトピー治療の全体像
・使われる薬の種類と特徴
を、薬剤師かつ当事者の視点でまとめます。


各薬剤の詳しい使い方や注意点は、個別記事で詳しく解説しています。

 

 ※この記事は一般的な情報提供を目的としています。
治療や薬の使用については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

実際に私が使用した薬剤記録はこちら→

 

※以降、本記事では「アトピー性皮膚炎」を「アトピー」と表記します。

成人アトピーの治療は段階的に行われる

 

アトピーの治療では、症状の程度によって使用される薬が異なります。

  1. 治療の基本は外用療法

  2. 症状に応じて内服療法・注射療法が検討される

出典:日本皮膚科学会ガイドライン

という流れで治療が行われます。

 

これから薬について順番に説明していきますが、
どの薬も共通して、

  • かゆみ
  • 炎症

を抑える効果はありますが、体質そのものを完全に変える治療ではありません。

 

  • 薬物治療

  • 保湿

  • 原因となるアレルゲンの除去

  • 食生活の改善

  • 睡眠

  • ストレス対策

などを組み合わせて行うことが重要です。

出典:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024より抜粋 一部改変

 

薬以外のセルフケア・増悪因子とその対策方法について→

 

 

成人アトピーで使用される外用薬

 

ステロイド外用薬

アトピー治療でもっともよく知られている治療薬が、ステロイド外用薬です。

ステロイド外用薬は、強さによって

  • ストロンゲスト
  • ベリーストロング
  • ストロング
  • ミディアム
  • ウィーク

の5段階に分類されます。

このランクは、症状の程度や、塗布する部位の皮膚の吸収率などを考慮して決定されます。

そのため、症状が強いからといって、必ずしも一番強いステロイドを使うわけではありません。

部位に合わない強さのステロイドを使用すると、副作用が起こる可能性が高くなるため注意が必要です。

 
また配合剤も存在し、例えばステロイドに抗菌剤が配合されている、リンデロンVGなどがあります。

 

 

ステロイドって、怖いからあまり使わないほうがいいって聞くのだけど、使って大丈夫?

これは実際に薬局でもよく受ける質問でした。

 

結論から言うと、適切に使用していれば問題がないどころか、アトピー治療の要となる薬剤です。

 

副作用が全くないものではありません。

このような不安が広まった背景として、

 

  • 内服では、アトピー以外のさまざまな疾患にも使用される

  • 外用薬に比べ副作用が多く、使用にはより注意が必要

 

といった事情から、
「外用ステロイドも危険なのではないか」というイメージが生じた可能性があると考えられます。

外用薬も、

  • 自己判断で中止する
  • 使用量や使用期間を誤る

といった使い方では、決して安全とは言い切れません。

しかし、医師の指示のもと適切に使用すれば、現在のアトピー治療において中心的な役割を担う重要な薬剤です。

 

ステロイド外用薬についての強さ・使い方・誤解について→

 

非ステロイド外用薬

プロトピック (タクロリムス)

プロトピックは、タクロリムスという免疫抑制作用をもつアトピー治療薬です。

最初から処方されることは少なく、ステロイド外用薬で効果が不十分な場合に使用されることが多い薬剤です。

 

正常な皮膚にはほとんど吸収されず、ステロイドで起きやすい毛細血管拡張や皮膚萎縮を起こしにくいという特徴を持っています。

  • 顔面や頸部の症状に有効性が高い
  • 小児用製剤がある

しかし副作用として

  • ヒリヒリ感など皮膚刺激感が出ることがある(発現率20~40%)
  • 免疫抑制作用に関連した皮膚感染症

などが報告されています。

刺激感については、事前にステロイドで炎症をある程度抑えてから使用することで軽減されることが多く、使用を続けるうちに落ち着く場合もあります。

また、塗布部位を日光に当てないよう注意するなど、いくつか使用上の注意点があります。

 

プロトピック軟膏の詳しい説明や使用方法→

出典:プロトピック軟膏添付文書/マルホ株式会社

コレクチム (デルゴシチニブ)

2020年に販売開始された比較的新しい治療薬です。

JAK阻害薬と呼ばれ、炎症に関わるシグナル伝達を阻害することで、炎症やかゆみを抑えます。

こちらも非ステロイド性の薬剤ですが、プロトピックで比較的多くみられる皮膚刺激感が出にくいとされています。

報告されている副作用として

  • 毛包炎(2.4%)
  • にきび(2.0%)

などがあり、発現頻度は比較的低いとされています。

 

ただしこちらも使用量や使用期間など、守るべき注意点はあります。

コレクチム軟膏の詳しい説明や使用方法→

出典:コレクチム軟膏添付文書 

 

モイゼルト (ジファミラスト)

2022年に販売された比較的新しい治療薬です。

PDE4阻害薬で、炎症性サイトカインの産生を抑制し、皮膚の炎症を抑える作用があります。

副作用としては

  • 色素沈着(1.1%)
  • にきび(0.5%)

などが報告されていますが、発現頻度は少なめです。

 

モイゼルト軟膏について→

出典:モイゼルト軟膏添付文書 

 

剤形について

外用薬には、使用部位や症状に応じて適した剤形があります。

  • 軟膏
    油性基材で保湿力が高く、刺激性が少なく、乾燥面だけでなく湿潤面(じゅくじゅく)にも使用される
  • クリーム剤
    軟膏よりべたつきが少なく、広い範囲に塗りやすい剤形です。湿潤が強い部位では刺激を感じることがあります。
  • ローション剤
    さらっとした使用感で、頭皮や被髪部、広範囲への塗布に適しています。

出典:今日の治療薬2020/アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024

 

成人アトピーで使用される内服薬

外用薬はアトピー治療の基本ですが、
皮疹が広範囲に及ぶ場合や、かゆみが強く日常生活に支障が出る場合には、外用薬だけでは十分に症状を抑えきれないことがあります。

そのような場合に、全身から炎症やかゆみを抑える目的で内服薬が併用されます。

内服薬には、

  • 主に「かゆみ」を抑える目的のもの
  • 炎症そのものを強力に抑えるもの

があり、症状の程度や治療反応に応じて使い分けられます。

 

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は、皮膚の炎症そのものを治す薬ではありませんが、かゆみを軽減することで掻破を防ぎ、外用治療を続けやすくする目的で使用されます。

ヒスタミンはアレルゲンやその他の刺激により細胞から遊離し、受容体に結合することでアレルギー反応を起こします。抗ヒスタミン薬は、その結合を阻害することで症状を抑えます。

抗ヒスタミン薬の中でも、アトピーでよく使用されるのは第二世代のH受容体拮抗薬です。

 

第二世代とは?
第一世代のH受容体拮抗薬は、血液脳関門を通過しやすく、眠気などの中枢抑制作用が起こりやすいものでした。
第二世代は脳内移行が少なく、眠気が起こりにくくなっています。
 
H受容体拮抗薬とは?
ヒスタミン受容体にはH~Hの4種類が存在します。
抗ヒスタミン作用を示すのはHとHがありますが、H受容体拮抗薬は消化性潰瘍治療薬として用いられています。

 

第二世代の抗ヒスタミン薬は比較的眠気が出にくいとはいえ、運転する場合服用できないものもあります。

運転禁止:ジルテック ザイザル アレロック ルパフィン
運転注意:アレジオン タリオン 
運転可能:アレグラ クラリチン ビラノア

運転可能なものでも、眠気の程度は個人差がありますので注意して使用してください。


その他、服用回数や服用タイミングも様々で、特に特徴的なのが、ビラノアは空腹時の1日1回の服用の薬になっています。

 

JAK阻害内服薬

JAK阻害内服薬は、アトピーの炎症に深く関与する免疫のシグナル伝達を抑えることで、外用薬では十分に改善しない中等度〜重度の症状を改善する治療薬です。

外用JAK阻害薬と同じJAK-STAT経路を標的としていますが、内服薬は全身に作用するため、効果が高い一方で、使用にあたっては慎重な管理が必要とされています。

  • オルミエント(バリシチニブ)
  • リンヴォック(ウパダシチニブ)
  • サイバインコ(アブロシチニブ)

施設や医師に関する要件を満たした場合のみ扱うことができ、投与に際しては血液検査や画像診断などによる安全性のモニタリングも必須です。

副作用としては、免疫抑制により帯状疱疹や風邪、感染症など免疫に関連するものが多く報告されています。
そのため、十分な説明を受けたうえで、定期的な通院・検査を前提として使用されます。
 

成人アトピーで使用される注射薬

外用薬や内服薬による治療を行っても、症状が十分にコントロールできない場合には、注射薬(生物学的製剤)が治療の選択肢となります。

注射薬は、アトピーの炎症に関与する特定の物質をピンポイントで抑える治療で、全身に作用しながらも、従来の内服薬とは異なる特徴を持っています。

効果が高い一方で、継続的な治療が前提となるため、症状の程度や生活への影響を考慮しながら選択されます。

 

  • デュピクセント(デュピルマブ)

炎症とかゆみの両方に効果、使用実績が多い

  • アドトラーザ(トラロキヌマブ):炎症抑制に特化

  • ミチーガ(ネモリズマブ):かゆみに特化

  • イブグリース(レブリキズマブ):新しく、選択肢が広がった薬

詳しい比較はこちら→(注射薬まとめ記事)

 

注射薬は一度使い始めたらやめられないという印象を持たれがちですが、症状や治療目標に応じて中止や他治療へ切り替えることもあります。

 

自分できちんと注射することはできるのかしら。

自己注射と聞くと不安に感じる方も多いですが、

実際にはペン型で操作は比較的簡単で、初回は医療機関で指導を受けながら行います。

 

注射はやっぱり高いのでしょうか。

 

外用薬や内服に比べると高額な治療ではありますが、高額療養費制度の対象となる場合が多く、実際の自己負担額は症状や収入によって異なります。

 

成人アトピー治療薬のまとめ

成人アトピー性皮膚炎の治療は、症状の程度や生活への影響に応じて、段階的に選択されます。

まずは外用薬を基本とし、必要に応じて内服薬や注射薬が追加されます。
これは「重くなったから次へ進む」のではなく、今の症状を適切にコントロールするための選択です。

治療の選択肢が増えた現在では、
「我慢し続ける」よりも、
「合った治療を早めに相談する」ことが、無理なく生活を続けるための一歩になります。

 

 

参考文献・出典

  • 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
  • 今日の治療薬2020
  • マルホ株式会社
  • 各ステロイド外用薬 添付文書
  • プロトピック軟膏 添付文書
  • コレクチム軟膏 添付文書
  • デュピクセント皮下注 添付文書

※内容は2025年12月時点の情報をもとに記載しています。

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